ピッチャー交代
総理大臣は勝手に辞められるかもしれないが、
マウンドにいるピッチャーは勝手に辞められない。
以前、往年の名投手と言われた人から、こんなことを聞いたことがあります。
以下は、名投手の話です。
「これは、私が、まだ若かった頃の話です。
ある試合に、先発投手として登板した。
今日は調子がいいと思っていたのに、
次から次へと打ち込まれる。
おかしい。
何度も何度も首をかしげる。
将来のエースと言われる俺が、なぜ、こんなに打たれるのか。
どんな球を投げても打たれてしまう。
もう嫌だ。
マウンドから降りたい。
ベンチを見ると、監督は微動だにしない。
きっと次のピッチャーを誰にするか迷っているのだろう。
とうとう、ストライクも入らなくなった。
満塁で押し出し。
最悪の展開だ。
しかし、それでも監督は微動だにしない。
ひどい。
このまま、俺は、マウンドで、さらし者になるのか。
惨めだ。
こうなったら開き直るしかない。
失点の世界記録でも作ってやる。
すると、不思議なことにストライクが入るようになった。
バッターも打ってくるが、ファールばかり。
ひとつアウトを取れたら、残りは簡単に打ち取れた。
いつの間にか、本来の調子を取り戻すことができた。
前半に大量得点を取られて、負け投手となってしまったが、
点を取られたのは、1回と2回だけ。
残りの回は、『完封』したようなもの。
敗戦投手となってしまったが、実りが多い試合だった。
調子が悪い時の対処の仕方を学んだ。
俺は、マウンドで、さらし者になったと思ったが、
本当に、さらし者になったのは、監督の方だ。
ファンから、『なぜ、ピッチャーの交代をしないのか』と、
散々、非難されただろう。」
名投手は、最初から名投手ではない。
苦労しながら名投手になっていく。
政治家も、最初から大政治家ではない。
「無能だ」と言われ続けながら、
苦労に苦労を重ねて、大政治家になっていく。
本日(2007年9月12日)、安倍首相が、突然、辞意表明をした。
このような辞め方では、本人の将来性に影響する。
「持病が悪化して総理大臣を続けられなくなった」という理由にすべきでしょう。